10代の若年者に好発し、腹痛、体重減少、発熱、下痢を主症状とする慢性の消化管の炎症性疾患。
病因は不明。 抗原の存在が示唆されているが、発症後は免疫学的機序で進行する。
マクロファージなどの単球系の機能異常が病因の一つと考えられている。
潰瘍性大腸炎と異なり、クローン病では粘血便はまれにしか生じない。
回腸がおかされると胆汁酸の腸管循環が障害されて胆石を生じやすくなるから。
縱走潰瘍の瘢痕化に起因する。
回腸末端に好発するが、全腸管に非連続性に発生しうる。
粘膜のみならず腸壁全体に炎症が波及 transmural penetration し、裂溝状潰瘍 fissuring ulcer を形成する。 しばしば瘻孔に発展し、注腸造影で描出される。
肉芽腫は疎に集合し、非融合性である。これが原因となって腸管の狭窄を招く。
クローン病は短期的には寛解しても長期的に見ると進行性である。
アミノサルチル酸とサルファピリジンの結合物で、大腸内で細菌層によって分解され、その分解産物が抗炎症作 用をもたらす。
細菌および原虫のDNA合成を阻害する。
適応は、イレウスや消化管大出血、 stagnant bowel syndrome などの合併症を呈した場合。
もっぱら大腸において主として粘膜をおかし、しばしばびまんや潰瘍を形成する原因不明のびまん性非特異性の慢性 炎症性腸疾患。直腸から上行性に連続的病変を形成する。 クローン病と同じく若年者に初発するが、高齢者にもう一つのピークがある二相性の分布を示す点がクローン病と異 なる。
潰瘍性大腸炎は多因子で規定される素因を有するものに、腸粘膜の経口免疫寛容が失われて、T細胞やマクロファー ジをはじめ好中球や血小板が活性化され、さまざまな炎症性サイトカインの産生と微小循環障害を伴って腸粘膜の上 皮細胞が破壊される疾患である。
20代に多く、男女差はない。
全症例の約3%が大腸癌に発展する。
病因は不明だが、特に炎症の慢性化に免疫現象が関与していることは確実である。 種々の自己抗体を認めることから、自己免疫疾患の性質を持つと考えられている。
日本人ではHLA-B52とHLA-DR2が対照群に比べて有意に保有率が高かった。
腸出血に由来する血便。クローン病と異なり、潰瘍性大腸炎では粘血便は必発症状である。
発症初期はまれであるが、活動期に至ると排便時や食後に軽度の疝痛を訴える。 特に大腸に沿った圧痛や反動痛は中毒性巨大結腸症の前兆であることに注意。
まれに潰瘍が深くなり固有筋層と神経叢が露出すると大腸の筋収縮機構が破綻して進行性に大腸の異常拡張を来 たす。穿孔の危険があるため緊急手術の適応となる。 穿孔した場合は敗血症により死に至るケースが多い。
壁に白苔が付着する。
ただし注腸造影で症状が増悪することがあるので注意。
中毒性巨大結腸症を探索する目的で行なう。
慢性の栄養障害もしくは大腸の炎症病変においてタンパクを含んだ滲出液の漏出による。 A/G比が低下し、α2グロブリンおよびγグロブリンの上昇が見られる。
排便が6回以上、顕血便、発熱が37.5度以上、頻脈90/min以上、貧血 Hb 10g/dl以下、赤沈 30mm/h以下の症状のう ち、4項目以上満たすもの。
病変は粘膜および粘膜下層に限局する非特異性炎症である。 クローン病と比較して、肉芽腫および skip lesion は陰性であり、
潰瘍および炎症は粘膜下層までに限局し、びまん性・連続性の炎症病変を形成する。 大腸粘膜には多数の好中球の浸潤がみられる。
多発した潰瘍およびびらんによって残存粘膜が炎症性ポリープ状に見えること。
腺管内や潰瘍底に好中球が充満する像。
潰瘍性大腸炎およびクローン病の活動期には、粘膜内のIL-2受容体濃度の増加、トランスフェリン受容体の 増加、CD4+T細胞の活性化がみられる。
今のところ炎症性腸疾患を引き起こすような自己抗原は検出されていない。 しかしながら粘膜固有層においてT細胞の活性化が見られ、これから分泌されたサイトカインが炎症細胞の浸潤やCTLに よる細胞障害を引き起こしていると考えられる。
特に潰瘍性大腸炎では、抹消血においてT細胞比率が減少し、相対的なB細胞増加が見られる。T細胞の中で はCTLの増加が見られる。特に大腸粘膜固有層においてはCD4細胞の増加によるCD4/CD8比の増加が見られ、B 細胞ではIgG1,IgG3産生細胞が特異的に増加している。
腸粘膜の単核細胞では IL-6,IL-8,IL-1β,TNF-αなどのサイトカイン産生が亢進している。
好中球浸潤にはIL-8が関係し、 in situ hybridazation法で調べたところ粘膜固有層内のマクロファージや腸粘膜上皮 細胞にIL-8のmRNAの発現をみた。
潰瘍性大腸炎の抹消血中には活性化血小板数の増加がみられる。活性化血小板は局所の炎症反応に関与するとともに、 platelet microparticle を放出して微小循環障害を引き起こす。
経口投与が可能な場合は、第1選択薬はサラゾピリンもしくはメサラジン mesalazine を経口投与する。 2週間以内に効果がない場合はプレドニゾロンの経口投与を併用する。
左側大腸炎型および全大腸炎型ではプレドニゾロンの注腸療法を行なう。
重症の場合は、電解質バランスや体液を適切にコントロールしながら重篤な合併症を回避することがま ず重要であり、次に手術に踏み切る適切な時期を見誤らないことである。 しかし近年では速効型シクロスポリンや新開発のCellsobaを用いた白血球除去療法も手術の代替手段と して注目されている。
重症例では脱水、低カリウム血症などの電解質異常、貧血、低タンパク血症、栄養障害などが生じる。
アミノサルチル酸とサルファピリジンの結合物で、大腸内で細菌層によって分解され、その分解産物が抗炎症作 用をもたらす。 サラゾピリンの副作用は、発疹・発熱・悪心・嘔吐・肝機能障害などである。
アザチオプリンはプリン代謝拮抗剤であり、イノシン酸と拮抗してプリンヌクレオチドの生合成の阻 害によりT細胞を介した免疫反応を抑制する。 白血球減少や薬剤アレルギーなどの副作用がある。
シクロスポリンは細胞内レセプターと結合し、T細胞のIL-2,IFN-γなどの産生を抑制し、へルパーT 細胞活性化を抑制することによって免疫抑制を行なう。腎障害や肝障害の副作用を持つ。
粘膜局所においてCD4+T細胞が組織障害に関与していることから、モノクローナル抗CD4抗体でCD4+T 細胞を抑制するもの。 副作用として全身的な免疫能の低下が見られる。
サラゾピリンに反応しない重症例に対して基本的に経口投与でステロイドパルス療法を行なう。
ステロイド静注療法が奏功しない場合には上下腸間膜動脈内にプレドニゾロンを動注する。
大腸粘膜で活性化される白血球を除去することによって抗炎症作用を発揮する。 免疫反応を沈静化する目的で顆粒球および単球を血中から除去する。
発生母地が大腸に限局するため、大腸全摘術を行なうことで完全に治癒する。 特に異形成など癌化の疑いのあるものに対しては大腸全摘術を行なう。
相対的適応は慢性持続型と再燃寛解型で難治性の場合や全身合併症を伴う場合であり、絶対的適応は重症例や穿孔・ 大量出血・中毒性巨大結腸症・癌化の疑いのあるもののほか内科的治療に不応答なもの。
低侵襲で安全確実なため、緊急手術例の術式として最適である。
従来は腸管病変に対しては効果が少ないと言われてきた。
潰瘍性大腸炎をはじめとする炎症性腸疾患においては、食事摂取量の低下や腸管からの体液の漏出により 低タンパク血症や電解質バランスの破綻などを来たす。 食事療法の目的はこうした腸管の負荷を軽減するために行なうものであり、したがって消化しやすく吸収 されやすい内容でありかつ高タンパク・高エネルギーで脂質を押さえるような食事内容が望ましい。 経口摂取が困難な場合には中心静脈栄養を行なう。
腸間膜の動静脈が閉塞を起こしたり、血圧が低下した場合にみられる急性の腸の出血性・壊死性病変。 高齢者や基礎疾患を有する者に多く、下行結腸(特に脾彎曲部)が好発部位となる。
血管の閉塞や血中酸素濃度の低下で、腸壁が低酸素状態になって引き起こされる。 特に下行結腸の曲がり角に位置する脾彎曲部は上腸管膜動脈と下腸管膜動脈の境界にあって血行不足に陥りやすい ため、虚血性大腸炎の好発部位となる。
腹痛と下血で急激に発症する。特に左下腹部の鋭い痛みとして感じられる。
粘膜内出血による大腸壁の肥厚や縱走潰瘍が見られる。
多くは内科的治療で自然軽快する。ただし狭窄型と壊死型は手術適応となる。
直腸下部の前壁に好発する慢性潰瘍。原因は排便時のいきみ。
赤痢アメーバ Entamoeba histolytica の嚢胞型の経口感染。
clostridium difficile が産生する enterotoxin、cytotoxin による腸炎。
抗生物質の投与によって正常腸内細菌叢が弱体化し、ディフィシル菌への菌交代現象が生じたことによる。
内視鏡で黄色の塊として映る。
原因となる抗生物質の投与を中止し、ディフィシル菌に著効を示すバンコマイシンやメトロニダゾールを投 与する。
Vero毒素による腸管障害、腎臓の血管内皮細胞障害。
偽結核菌 yersinia pseudotuberculosis、腸炎エルシニア yersinia enterocolitica が起因菌。
器質的な異常がなく、腹痛や下痢などの症状のみが存在する。
小さな仮性憩室が多発する。 注腸造影画像は こちら。
腸内容物の停滞による感染を防ぐために緩下剤を処方する。
しばしば子宮頸癌の放射線療法の副作用として生じる腸炎。