
子宮から発生する癌のうち、子宮頸部に初発する癌の総称。 好発部位は子宮頸部の扁平上皮と円柱上皮の接合部である扁平円柱上皮境界に存在する予備細胞である。 けだし予備細胞は扁平上皮細胞にも円柱上皮細胞にも分化しうる bipotentialな細胞だから。 予備細胞は円柱上皮細胞の直下に存在し、損傷円柱上皮を補完するほか、扁平上皮化生を来たすことがある。
女性生殖器の悪性腫瘍では最多。好発年齢は閉経前の40代である。
ウイルス感染が子宮頸ガンの病因と考えられている。
無症状が過半数を占めるが、古典的な症状は接触出血である。
子宮頸癌の組織型としては最多で約8割を占める。特に非角化型が多い。
子宮体部の腺癌と同様の組織像を呈するため鑑別を要する。
腫瘍細胞は淡明な胞体でグリコーゲンに富み、核は細胞の遊離面に突出する hobnail型を示す。 明細胞癌の病理像は、 こちら 。
術前に判断される。
上皮全層にわたって細胞異型と層構造の乱れを認めるもの。 組織画像は、 こちら 、
組織学的にのみ診断できる浸潤癌で、浸潤が基底膜下5mm以内のもの。局所的な切除術で治癒する。
これ以上を浸潤癌 invasive type という。子宮全摘術の適応となる。
放射線療法しかない。
扁平上皮系の病変に着目する。
pap smearによる細胞分類。細胞異型および背景に着目する。 背景は出血・炎症細胞・壊死性病変・変性物などの有無に着目する。浸潤癌では背景が汚くなる。
異常細胞を認めるが良好。
悪性を少し疑い、軽度の異形成を想定する。これ以上ではコルポスコピー(膣鏡診)を続けるのが望ま しい。 pap smear 画像は、 こちら 、
悪性を疑う。組織診での高度の異形成上皮を想定する。 pap smear 画像は、 こちら 、
核の著明な腫大および核クロマチンの増量を認める。悪性を強く疑い、上皮内癌を想定する。
著明な核クロマチンの増量に加えて核の大小不同が認められ、核小体をもつものもある。 悪性細胞が確認されており、組織診での浸潤癌を想定する。背景も汚くなる。
擦過細胞診にて異常があればコルポスコピーで酢酸塗抹下に描出された病変を生検する。 上皮の増殖や N/C比の増大した部位では光透過性が減少して白色を呈する。 ただし移行帯が頸管内に退行している高齢者などではコルポスコピーは不適当であり、癌の存在を否定 できない。 コルポスコピーによる正常画像は、 こちら 、
経過観察もしくは円錐切除術 cervical conization 。
子宮のみを摘出し、その付属器の摘出やリンパ節廓清は行なわない。
浸潤癌に対する基本術式である。 子宮の付属器・膣および付属リンパ節を子宮から十分離れた位置で摘出する。
尿管を遊離するために膀胱子宮靭帯を前層と後層に分離したのち切断する。
術後に膀胱直腸障害を生じる。
膀胱直腸障害を回避するように修正された広汎子宮摘出術。
膀胱や直腸も含めて広く骨盤内内臓を摘出する。
子宮体の子宮内膜から発生する癌であり、子宮筋腫や乳癌と同様にエストロゲン依存性である。 好発年齢は高齢者。 欧米と比較して日本では1/6程度であったが、高齢化社会の到来とともにその発生率は増加している。
はじめは漿液性帯下であるが癌の進行とともに血性帯下になる。
子宮内膜から細胞を採取する方法によれば、検出率は9割以上である。 一方、子宮頸部から採取する方法では、子宮体癌の検出率は半分以下に減少する。
原則としては子宮摘出と両側付属器摘出術を行う(広範子宮摘出術)。 けだし、子宮体癌では卵巣転移の頻度が高く、好発年齢が閉経後であるため卵巣を温存する必要に乏し いから。
子宮体癌は化学療法に頑強に抵抗する。
術後に術後管理のための分類である。術前診断が予後と相関しにくいことから開発された。
子宮頸部の粘膜上皮の異形成であり、子宮頸癌の前癌状態である。
HPV感染によるコイロサイト koilocyte が見られる。
上皮細胞に極性の乱れが生じ、しばしば多核形成を伴う。
異型細胞が全層におよび、上皮細胞の極性の乱れが著しい。
核周囲に halo があり、電顕上で核内にウイルスが認められる。
平滑筋で構成される良性腫瘍であり、子宮筋の中やその近傍に発生し子宮筋とは明瞭に区別される。 性周期を有する女性の3割近くにみられる頻度の高い疾患であり、特に30代以降に好発する。 通常は多発性である。下腹部痛や不妊症の原因となる。
原因は不明であるが、結合組織の化生であるとの仮説がある。
そもそも子宮内膜はエストロゲン下で増殖する。このために筋腫は妊娠時に急激に増殖し、閉経後には縮退する。 腫瘍細胞はエストロゲンとプロゲステロンの受容体を持つため、卵巣ステロイドホルモンに反応性を持つ。
子宮壁の漿膜下、すなわち腹腔側に筋腫を生じたもの。 したがって子宮内膜に影響をおよぼさないために不正出血は生じないが、有茎性の場合は茎捻転によって 急性腹症を呈することがある
筋腫が子宮筋層内にとどまるもの。もっとも多く多発しやすいが、有茎性になりにくい。
筋腫が子宮腔から子宮頸管を通過して膣内に脱出することがあり、これを筋腫分娩 delivered myoma という。
多くは無症状である。
特に粘膜下筋腫では月経血量の増加により、鉄欠乏貧血を生じやすい。
筋腫分娩や炎症による内膜面の潰瘍形成などを来たした場合には、不正子宮出血や黄色帯下を見ること がある。
筋腫が他臓器を圧迫すると下腹部痛を来たすほか、特に膀胱や尿管を圧迫すると頻尿や便秘を来たす。
多発性の粘膜下血腫では結節による着床障害によって不妊を来たすほか、腹腔内液性因子の作用を介し て妊娠を阻害する。また妊娠しても流早産や胎位異常を来たしやすい。
T2強調画像にて筋腫が周囲との境界明瞭な腫瘤影として描出されるため、子宮筋腫の診断にもっとも有 効である。
MRIでは sarcoma,充実性卵巣腫瘍に類似する。超音波エコーでは卵巣腫瘍・子宮外妊娠などと間違えやすい。
臨床症状において子宮筋腫ともっとも類似する疾患は子宮内膜症である。両者とも生殖年齢に好発しエ ストロゲン依存性であり、月経痛・過多月経・子宮増大などの症状を呈する。
妊娠時に筋腫が梗塞によって赤色変性を起こすと微熱や圧痛を訴えて血清検査でも若干の白血球増加を呈す る。この場合には虫垂炎・子宮破裂・尿路結石・腎盂腎炎などとの鑑別が必要となるが、画像診断で鑑 別される。
子宮筋層より、円形で境界明瞭な結節が発生する。腫瘍は高分化であり、正常の子宮平滑筋とよく似ている。
良性の所見である。
紡錘形の平滑筋線維が渦巻き状に増生し、筋細胞束間に結合線維が混入する。
年月の経過とともに、以下のような二次的変化を呈する。
筋腫の血行障害によって間質に硝子化が生じる。
血行障害が進行して組織壊死を起こすと、多数の小嚢胞が形成される。
急激な血行障害によって筋腫が赤褐色の柔らかい結節となる。特に妊娠時の筋腫に生じやすい。
有茎性の漿膜か血腫の茎がおれると血行障害により鬱滞し、激痛を生じる。
まれに筋腫の肉腫性変化を生じる。
多くの筋腫は無症状であって治療を要しないが、増大化した筋腫が骨盤内臓器を圧迫して症状を呈すれば 治療の対象となる。
確実で根治的な治療法のため、挙児を希望しない場合にはもっとも広く行なわれる。 適応は筋腫が巨大である場合や出血や圧迫症状を生じた場合、急激に腫瘤が増大して肉腫の疑いがあ る場合などである。 通常45才以下の症例では両側卵巣を温存するが、卵巣あるいは卵管に病変があれば付属器も摘出する。
挙児希望の症例には筋腫結節のみを切除して子宮を温存する。 筋層に切開を入れ、筋腫結節を筋層から刳り貫くように摘出した後に、筋層を縫合する。 小さな筋腫は摘出が難しく、術後に再発することも多い。
妊娠時の核出術は筋腫が有茎性であって容易に捻除可能なことが適応条件である。 核出後はおそらく腹腔内の液性因子の改善によって妊娠率が上昇するが、粘膜下筋腫の核出術では子 宮内膜の損傷により子宮破裂の危険を伴う。
粘膜下筋腫を電気メスで切断する。
GnRH誘導体を投与して、低エストロゲン状態で卵巣機能を抑制する。 このホルモンの類似体は下垂体前葉のGnRH受容体を連続的に刺激することでGnRH受容体の減少を招い て下垂体からのLHおよびFSHの分泌を抑制する。したがってエストロゲンの産生が減少する。
ただし持続的な低エストロゲン状態に反応して筋腫組織のエストロゲン受容体の数は増加するため、ホルモン療 法を中止すると急速に筋腫が増大する。 したがって適応は、サイズが大きく症状を訴える挙児希望者や閉経前後の症例のほか、筋腫核出術の術前である。
近年 ethyl-nor-testosterone の派生体が筋腫発育の抑制に有効であり、ホルモン療法よりも効果が 持続するとの報告がある。日本では認可されていない。
約半数の筋腫が妊娠初期から中期にかけて子宮の増大とともにも増大するが、いずれの症例で増大しやす いかは予測しがたい。
筋腫の大きさが3cm以上では早産・子宮破裂などの危険が高まるため、帝王切開の適応になりやすい。 胎盤が筋腫の近傍に形成された場合は流産や分娩後出血 postpartum hemorrhage を来たしやすい。
頸部筋腫で分娩を妨げる場合は帝王切開の適応となる。
悪性間葉性腫瘍であり、平滑筋をはじめ骨や横紋筋などの中胚葉成分由来の組織から構成される。 急速に増大し、転移の形式は周囲臓器への連続性浸潤が多い。
閉経前後の女性が不正性器出血を訴えることが多いが、無症状のこともある。
特異的なものはないが、平滑筋肉腫では血清LDHが上昇することがある。
子宮筋腫との鑑別は困難である。
子宮の上皮成分と非上皮成分がともに混在するものをいう。
子宮内膜の一部が増殖し、有茎性の隆起性病変を形成したもの。