
頭蓋内の中枢神経,すなわち大脳・小脳・脳幹の実質内に出血が生じ,血腫を形成したもの。
脳出血の病因は、血管の脆弱性を背景とした脳実質内の血管の破綻である。 すなわち血管の脆弱化によって特に穿通枝にて微小動脈瘤が形成されやすくなり、これが破裂して出血を 生じる。
中大脳動脈の枝が破綻し、局所神経症状としては対側の片麻痺を生じるほか、病側への共同偏視が特 徴的な症状である。 病側への共同偏視は前頭葉から対側のPPRFにのびる線維が障害されることに起因する。
局所神経症状としては対側の片麻痺を生じる。眼球上転障害による鼻尖凝視が特徴的な症状である。
脳出血の中では例外的に局所神経症状に乏しいという臨床的な特徴を持つ。 症状としてはめまいや失調症状を呈する。
高血圧もしくは脳動静脈奇形が原因となって出血する。
病態は血腫と脳浮腫によるものであるからその範囲は脳梗塞よりも広範囲となりがちであり、したがって 症状も脳梗塞に比べて幅広いものとなる。
急性期には血腫の空間占拠性病変としての影響が広範囲な神経症状として出現する。 まず周囲の健常な脳組織は強い圧迫を受け血行障害に陥り、血腫の周囲に脳浮腫が発生することで頭蓋 内圧はさらに亢進して脳ヘルニアに発展する。
慢性期には血腫の形成による中枢神経組織の破壊が問題となり、局所神経症状を呈する。 出血が停止するまでに血腫は健常な脳組織を破壊しながら増大していくため、血腫が除去あるいは吸収 されても脱落症状が残る。 局所神経症状はどの部位が破壊されたかによりさまざまであるが、対側片麻痺・対側感覚障害・ 対側視野欠損などを呈する。
急性期の脳出血はCTでは高吸収域(HDA)として描出される。 ただし慢性期の脳出血では血腫が次第に周辺から吸収されてために、高吸収域から等吸収域となっていく。
MRIでは慢性期においてヘモジデリン沈着により低信号域として描出され、特に血腫の範囲を確定するために有効である。
主に脳浮腫に対して(1)マンニトールなどの高浸透圧性脳圧降下薬もしくは(2)ステロイドのいずれかを 投与する。
血腫そのものを除去するにつきる。
高血圧による穿通枝の血管壊死であり、好発部位は被殻・視床・小脳・橋である。
特定の原因や病理学的変化に対応するものではなく、局所神経症状が24時間以上持続し、3週間以内に消失するとい う臨床症状から分類された概念である。 その本態は脳梗塞であると考えられており、あくまでも遡及的に診断されるものであって、急性期には脳梗塞と区別 できない。
くも膜下出血とは,くも膜下腔に出血が起こり、脳脊髄液に血液が混入した状態を総称する。 その大多数は脳底の主幹動脈にできた動脈瘤の破裂、あるいは脳動静脈奇形の破裂によるものである。 同じ出血性脳血管障害の脳出血と比べて局所神経症状がなく、もっぱら頭蓋内圧亢進症状を呈する点に臨 床上の特徴を持つ。
CT所見による分類である。
血液の見られないもの。
血液がびまん性に存在するか、すべての垂直層(IHF,島回槽,迂回槽)に1mm以下の薄い層を形成しているもの
局所的に血塊があり、垂直層の髄液槽内に1mm以上の血液層を形成しているもの。
びまん性SAHあるいはSAHはなくとも脳内もしくは脳室内に血塊を見るもの。
未破裂動脈瘤。
無症状か、軽度の頭痛もしくは項部硬直を認める。
中等度以上の頭痛・項部硬直を見るが、脳神経麻痺以外の神経学的所見を認めないもの。
傾眠状態・錯乱状態あるいは軽度の巣症状を示すもの。
昏迷状態で中等度以上の片麻痺があるもの。
昏睡状態で除脳硬直を示すもの。
頭蓋内の動脈に先天的に生じている動脈瘤が破裂することによってくも膜下腔に出血が起こるもので、 クモ膜下出血の原因としては最多である。 大部分が動脈の分岐部に生じ、特に Willis輪前半部に多い。好発年齢は50才である。
先天的に脳の動脈系と静脈系が異常な血管により短絡しているため、動脈圧がそのまま静脈にかかり AVMは次第に増大していく。 脳表の動静脈瘤が破綻すると脳出血とともにクモ膜下腔にも血液が漏出することで、クモ膜下出血をきたす。 好発年齢は30代であり、動脈瘤破裂によるものよりも若い。
外傷性では多くは頭蓋円蓋部に出血が生じる。
頭蓋内圧亢進症状が前景に立ち、局所神経症状を欠く点が極めて特徴的である。 その発症は突然であり、しばしば「バットで殴られたような」と表現される激烈な頭痛で始まり、それに意識喪失が 続く。
再出血をしない限り出血は吸収されていくので、次第に症状は軽減していく。
頭蓋内圧の急激な上昇によってクモ膜が伸展されて痛覚神経の刺激を生じるから。 ただし発作の数日前に頭痛などの前駆症状が見られることもある(警告発作)。
破裂した動脈瘤はしばしばフィブリン網によって一旦止血されるが、直後に再破裂を起こしやすく、再 出血は多くの場合致死的である。
出血がクモ膜下腔を通って直接眼球に及ぶと生じる。
直後に脳底部髄液槽のクモ膜下腔において出血を示す高吸収域がみられる。経時的に低吸収域へと変化 する。 CT画像は こちら。
基本的に術前に出血の原因となった動脈瘤や動静脈奇形の部位を確定するために行なうものであり、病 態の程度の判定には不適である。 ただしクモ膜下出血後6時間以内は再破裂の危険が大きいのでこの後に行なう。
網膜前出血 preretinal hemorrhage が見られる。
CTで不明瞭な症例にかぎって実施する。 穿刺時の外傷による出血と鑑別するには髄液を遠心して上澄のキサントクロミーを確認する。
発症後1週間前後に脳動脈周囲に血腫が充満してくると赤血球が破壊されてオキシへモグロビンが漏出する。 これが血管を狭窄して血管攣縮をもたらすと考えられてる。 その結果、脳血流量が低下して狭窄の遠位部に脳梗塞を招来し、意識障害や片麻痺をきたす。
発症後1ヶ月以降に生じる合併症であり、血腫が脳脊髄液に吸収される過程でクモ膜顆粒を障害すると 髄液の吸収障害を来たすために脳室は拡大するが髄液圧は正常にとどまる。 症状としては痴呆・歩行障害・尿失禁が生じる。
破裂動脈瘤の場合は早期にclippingを行なう。
鎮静剤、降圧剤の投与。
72時間以内にクリッピングを行なう。
髄液に血液が混入したままでは血管攣縮を招くので、脳槽ドレナージで血性髄液を除去する。 なおも進行する脳血管攣縮に対しては輸液により循環血液量を増やしたり、昇圧によって脳還流圧をあげたり、バ ルビツレートなどで脳代謝を抑制するなどの対策をとる。
術後に水頭症が発症してくることがあるが、これに対しては脳室腹腔短絡術(VP shunt)を行う。
外科的治療法と並行して一般的全身管理としての内科的治療法を行わなければならない。 例えば、浣腸や緩下剤による排便時の怒責抑制、降圧薬の投与、脳浮腫に対するステロイド投与などで ある。
分岐部の動脈壁の脆弱性に起因する動脈瘤で、先天的なもの。 したがって分岐の豊富なWillis輪が好発部位となる。 動脈瘤壁は中膜を欠くために破綻しやすく、多くの脳動脈瘤はクモ膜下腔に存在するので、クモ膜下出血 の最大の原因となる。
女性に多く、約2割が多発性である。 好発部位は特に内頸動脈後交通動脈分岐部 ICPC、前交通動脈 Acom、中大脳動脈 MCA、脳底動脈末梢部 basilar top の順に多い。
破裂しない限り、原則として無症状である。 ただし動眼神経近傍の脳動脈瘤の場合は、瘤による圧迫で同側動眼神経麻痺を来たすことがある。
血管撮影中に再出血を誘発するという危険はごく稀にあるが、本検査で得られる情報なしには手術は危険であるた め、重篤な患者であっても致命的な状態にない限り術前には本検査を行なう必要がある。 DSA画像は こちら。
クモ膜下出血の原因としては最大である。動脈瘤は,大部分が動脈の分岐部に生じ,特に Willis輪前半部に多い. 好発年齢は50才である。
術前管理としては再破裂を予防するために血圧コントロールが極めて重要となる。
開頭し動脈瘤頸部をクリッピングするものであり、主に嚢状動脈瘤の根治的治療として用いられる。
多くが24時間以内に脳動脈瘤からの致死的な再出血を生じるので、これを防止するために動脈瘤の clipping を 行う。 術後合併症として、術後1週間前後に脳血管攣縮が生じうる。
頸動脈系動脈瘤に対しては原則的に pterional approach をおこなう。
Sylvius裂を深部まで開く。
接着剤を用いて動脈瘤壁を補強する。
再出血を予防するために降圧する。
脳動脈と静脈が毛細血管を介さずに直接吻合した先天奇形。静脈に高い血圧がかかるために破裂を生じやすい。 特に脳表の動静脈瘤が破綻すると脳出血とともにクモ膜下腔にも血液が漏出することで、クモ膜下出血をきたす。
特に痙攣発作が初発症状として特徴的である。
全摘出術を行なう。
脳室は拡大するが髄液圧は正常にとどまる疾患。
クモ膜下出血や髄膜炎が基礎疾患として存在し、クモ膜下腔が閉塞して発症する。
発症後1ヶ月以降に生じる合併症であり、血腫が脳脊髄液に吸収される過程でクモ膜顆粒を障害すると 髄液の吸収障害を来たすために髄液の容積は拡大するが、脳室も拡大するために髄液圧は正常にとどまる。 症状としては痴呆・歩行障害・尿失禁が生じる。
痴呆、歩行障害、尿失禁が3大徴候となる。
前頭葉全体の障害に起因する。
下肢に分布する皮質脊髄路が側脳室壁に接して走行するためである。
遅れて出現する。
脳室拡大とともに脳室周囲透亮像(periventricular lucency,PVL)といわれる、髄液の脳室壁漏出を示す所見が得 られる。 CT画像は こちら。 側頭葉前角周囲にPVLが見られる。
PVLはT1強調で低信号、T2強調で高信号領域として描出される。
脳室-腹腔シャントを行うと痴呆が消退する。